2016年6月10日金曜日

DIYでやってはいけないこと

DIYでは、ただ作品を完成させるという事だけでなく、出来上がったものを自分で使ったり、家族や友人などに使ってもらったりする事もできます。そうした実用性の部分も大きな魅力のひとつです。プロが作ったものや、工場で作られたものに比べて多少下手であったとしても、そういった部分がむしろ手造りの味を感じさせ、楽しみや愛着の要素となる事もあります。

しかし、安全管理や法令遵守に関しては、プロと同じ様にきちんと行わないと、単に仕上がりが上手だとか下手だとかというだけでなく、取り返しのつかない事故が発生する場合や、法令違反になってしまう場合があります。ここに関しては、いくら素人だからといって、大目に見てもらえない部分がかなりあります。

今後DIYに本格的に取り組んで行こうと考えている人には、そうした、危険やコンプライアンス違反に関する理解が欠かせません。どういう行為が事故の原因になるのか、あるいは法令違反になるのか、という事について、基本的な事はきっちりチェックして、日頃から意識しておく事をぜひともお勧めしておきます。

一般的なDIYで日常的によく起こりがちな事故の原因や法令違反に関して、ここでは紹介しておきます。

 

電気工事


電気工事は、不適切な施工が行われてしまった場合、DIYを行った人自身やその周囲の人が感電してしまう場合があります。その他に、火災が発生してしまう危険もあります。電気工事に関しては、電気工事士法という法律があり、電気工事士という国家資格があります。電気に関して試験に合格できるだけの十分な知識と施工技能がある人だけがその国家資格の免許保持者となり、施工をして良い事になっています。

ただし厳密にいえば、無免許の人でも禁止されていない部分があります。しかし、その範囲はあまりにも狭く、実質的には無免許の人は電気工事をするな、と言っているのとほとんど変わらない様な状況です。

例えば、古くなった家庭の既設のスイッチやコンセントを新品に交換するだけの工事や、引掛けシーリングでない、電力ケーブルを直接接続するタイプの照明器具を取り外して別の器具に新旧交換するという、たったその程度の工事であっても、無免許で行えば違法だと法律を解釈するのが一般的です。

そしてもし、たまたま免許が不要な範囲の作業しか行わないのだとしても、施工方法が不適切であれば火事や感電などの事故が発生する危険はあります。ですから必然的に、免許が不要だったとしても、工事に関する知識はちゃんとしたものが必要です。その工事を適切にこなせるできるぐらいの知識がもしもあるのならば、あとほんの少し勉強をする程度で第二種電気工事士の免許は取得できてしまいます。ですので無免許のまま、わざわざ勉強して無免許で可能な範囲の工事を適切に行う、という事にはあまりにもメリットがなく、実際にやっている人もほぼ居ません。

ホームセンターに行けば、スイッチやコンセントの部品、ケーブル、照明器具といった各種の電材や、電気工事用の工具も売っています。これらのものは、いくら手軽に買えるような売り方をしているからといって、無資格者がそれを使って作業して良いという事ではありません。無資格者が材料や工具を買うだけで違法だという訳ではありませんが、その買ったものを使って工事をしたいのならば、有資格者に頼んで代わりに工事してもらう事が必要になります。売り場に、これらの商品の取付作業には電気工事士免許が必要だという旨を表示してある店舗も多いです。

 詳しい情報はこちら
外部リンク「 電気技術者試験センター」
http://www.shiken.or.jp/range_qualification/03.html

丸のこやグラインダーを使った作業


丸のこやグラインダー、その他振動を発生する電動工具などを仕事の業務で使用する人には、厚生労働省が定める安全教育や特別教育を受講し、その証明書を携帯する事が義務づけられています。現在のところ、この義務づけは業務中の労働として使用する場合に限られており、家庭内のDIYで使用する場合には義務づけられていません。

この辺りの情報が正しく伝わらずに「DIYをやる人が、法定の教育を受講せずに電動工具を使うのは、お目こぼしされているけれど本当は法律違反だ」という、もっともらしい噂も時々流れたりする様ですが、この噂は正しくはありません。DIYの範囲でならば、法定の教育を受講せずに電動工具を使ったとしても、特にお目こぼしという事でなく、はじめから法律違反ではありません。

しかし、はじめはちょっとしたDIYのつもりで作業していても、そのうち人から頼まれてお金をもらって作業をしてしまった、という場合はどうなるでしょうか。そういう場合は、業務と呼ぶ程の規模、金額、反復継続しているかどうか等が個別の事例に関して総合的に加味されて判断される事になります。この状態は、誰が見ても明らかに合法だと言える状態ではなく、違法と判断される可能性があるという事です。いわゆるグレーゾーンです。グレーゾーンであると言うことは、場合によっては違法と判断され、法律による処分を受ける可能性があるという事です。そこから人生が思わぬ方向に変わってしまう事もあり得ますので、受講済みでない人は、人からお金をもらって電動工具を使った作業をしないようにするか、あるいはきちんと受講をして、業務だと解釈されても問題がない様にしておきましょう。

また、受講せず電動工具を使うとなると、正しい操作方法や適切な作業方法を知っている人から教わったりする機会がないまま、ぶっつけ本番で使ってしまう事もあり得ます。これは危険を伴いますし、事故が発生した場合には使用する本人をはじめ、周りにいる人々が取り返しのつかない大怪我をしてしまったり、大事な財産に損害が発生してしまったりする場合も考えられます。その後の人生を大きく変えてしまう事もあります。制度としての義務はありませんが、電動工具を使った安全な作業方法を確実に理解しておきたいならば、業務でなくDIYの範囲内だけで使うのであったとしても、教育を受講しておくのがより好ましいと言えるでしょう。業務で工具を確実に使用する人でなければ受講できない、という事はありません。「必ず使うかどうかは分からないけど、これから使うかも知れない」という人でも受講できます。

 
参考(外部リンク)

「厚生労働省」
https://www.tokubetu.or.jp/pdf/20100714.pdf

「安全衛生情報センター」
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-16/hor1-16-1-1-0.htm

足場を組む作業


足場を組み立てたりする業務に就く人は、厚生労働省の定める特別教育の受講が必要です。さらに、一定以上の高さになると組立作業の主任者としてさらに別の講習の修了が必要です。

これらは、現状は業務において労働として行う場合に限られていますので、趣味のDIYで足場を組むという程度では講習の受講は義務付けられてはいません。しかし、足場の倒壊や足場からの転落は本人がケガをするばかりでなく、他人にケガをさせたり、多くの物を破損する様な大きな事故につながる危険性も大きいため、義務が無いとはいえ受講により正しい施工知識を得ておく事が好ましいでしょう。

特に、作業場所と隣家との距離が近いだとか、人や車両が通行する道路が近いといった場合は、作業ミスや不適切な施工によって他人を巻き込んでしまう危険性が大きいです。こういう場合に関しては、いくらDIYの作業だとはいえ、講習を修了して業務で必要とされるレベルの知識をしっかりと持ったうえで行うほうが、安全管理の観点からすると好ましいでしょう。

 参考(外部リンク)

「厚生労働省」

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000088456.pdf